木の鐸会(きのすずかい)の雛人形の特徴

一般的な古今雛人形
一般的な古今雛人形


木の鐸会の雛人形
木の鐸会の創作雛人形


頭部(かしら)の制作

上の2つの写真は、上が一般的な古今雛(昭和期以降)、下が木の鐸会会員の作品です。
雛人形には様々な形式がありますが、現在、一般的に売られているものは昭和期に流行した古今雛と呼ばれるものが元になっています。
頭部は雛型に桐塑(とうそ=桐の木の粉<おがくず>に麩糊<ふのり>を混ぜて粘土状にしたもの)を押しつけて型どりしたものに、胡粉(貝の粉)をニカワで溶いたものを塗って仕上げます。
目は、かつては描き入れていましたが、今ではガラス玉の義眼を埋め込むのが一般的です。
結果、頭部の形も目の表情もまったく同じものがいくつもできあがります。人間の手で作られてはいますが、一種のコピー作業とも言えます。

一方、木の鐸会の雛人形は、一体一体ゼロから石塑(せきそ=石の粉)粘土で作り上げます。目は彫刻刀で細かく彫り込んだ上から胡粉を塗った頭部に面相筆でていねいに描きます。わずかな違いが人形の個性になり、同じものは2つとできません。また、義眼をはめ込んだ一般の古今雛とは違って、仏像と同じように目を彫り込んでいますので、見る角度によって表情が変わります。

髪は、古今雛は鬘を被せますが、木の鐸会の雛人形は、故・平田郷陽氏(人間国宝)が完成させた木彫木目込み人形の技法を基本にしていますので、被せものではなく、彫り上げた頭部に直接彩色します。

古今雛の頭部
古今雛の頭部


木の鐸会雛人形の頭部
木の鐸会雛人形の頭部

衣装の違い

次に衣装ですが、木の鐸会の雛人形に使う布は、古い時代布が基本です。量産されている雛人形の衣装は、人形用に作られていますが、そうした生地では風格が生まれないため、正絹製の古い帯地や表装布から厳選したものを使います。
この布地を探すのが大変で、今ではいい布は滅多に手に入りません。

また、古今雛は着物をそのまま着せていますが、木の鐸会の雛人形は十二単(じゅうにひとえ)の衣装も丹念に胴体部に木目込んでいきます。これは大変な手間と技術が必要で、一般的な雛人形では真似することができません。技術を持った職人がいないだけでなく、コストがかかりすぎて商売にならないからです。

従来、木目込みの雛人形は立ち雛に限られていました。胴体がシンプルな造形でないと木目込みできないからです。
しかし、木の鐸会創始者・鐸木能子は、十二単の衣装人形に木目込みの技法を使うことに挑戦し、それを実現させました。このタイプの雛人形は雛人形の歴史に新しい足跡を残しました。

立ち雛も、一般的なシンプルな造形のものだけでなく、複雑な曲線を描いたボリュームのある立ち雛にも挑戦しています。このタイプの立ち雛は布をきれいに木目込むのが大変難しく、制作には十二単雛とは違う難しさがあります。
室町雛をモデルに、より現代的で複雑な造形に仕上げた立ち雛

どちらも大変な手間がかかるため、一人の作家が作れる数はせいぜい年間数組です。結果、世界中に木目込み十二単の雛人形は限られた数しか存在しません。
古今雛の衣装は衣装をそのまま着せている


木の鐸会の雛人形は「木目込み」されている

「製造」するのではなく「創造」する

商品としての雛人形の世界は分業化されています。手だけを作る職人、衣装をミシンで縫う人、それを着せつける人、義眼を製造する工場……と、効率を上げるために作業が細分化されています。頭部は「かしら師」と呼ばれる頭部専門の職人が手がけます。
しかし、木の鐸会の雛人形は作家の「オリジナル工芸作品」ですので、分業で作るなどということはありえず、制作工程のすべてを一人の作家が手がけます。
つまり、商品としての雛人形を製造するのではなく、最初から、人形作家が自分のアート作品を創り出しています。一般の雛人形とは発想の段階から違っているのです。
木の鐸会の雛人形はデパートの「雛人形売り場」や一般の人形専門店にはありません。髙島屋の美術画廊に展示され、「美術工芸品」として扱われています。
組み合わせる屏風(別売)も、古い時代布を厳選して使用しています。

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これは画像です


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